恋色語
けどこれって…。私抱きしめられてる。身動きとれない。

持ち上げた力を逃がさないで、片桐は私もろとも倒れ込んだ。荷物は辺りに散乱してしまった。


「…ッん…ッー…」

「シッ」


声を出せないように私の頭をギュ~ッと胸に当てる。

バレないための保険か、私の腰にも手を回して密着させてきた。

カアァ…。


「ん、ッー!!」

「暴れんな」


暴れたい訳じゃない。ただ…抱きしめられたの初めてだし、いい匂いするし。

だから下着見られた時より赤くなってるとおもうし。


見上げると片桐の顔が至近距離にあってドキッとする。

動けず、ただただ目を閉じるしかない。




これいつまで……続くの?





ガチャ…。



「やっと出てった。…どうした?」

「…バカ」


とりあえず小さな声で。時間長かった。足をくずしてその場に座る。


「助けてやったんだが」

「それでも……バカ」


強くは言わない。そっと、照れ隠しに、優しく、うつむいて。
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