やさしい手のひら・前編【完結】
海から帰る途中、由里から着信があった

「私を置いてかないでよーー」

「あっごめんごめん。忘れてた。今、どこ?」

「家だよ。亜美、泊まりにおいで」

「うん、そうする」

私はバスに乗って由里の家に向かった

「入ってーあんたすごい顔だよ」

「エヘヘッ」

「落ち着いた?」

「すっきりしたような、しないような」

「本郷泣いてたね」

「うん。初めて見た」

「私にさー亜美に悪いことをしたって反省してたよ。もう一度会って話したいって」

会いたいけど会っちゃいけないんだ

「亜美が決めたことだから何も言えないけど、今回のこと本郷もきっと後悔してると思う。だから泣くんだし」

「うん、わかってるよ。でもね、今戻ってもほんと同じなんだ。またいつか同じことを繰り替えしてしまう。これでいいの。あとから後悔するかもしれない。凌が彼女を作って、あの笑顔を私以外の人に見せてたら、悲しいと思う。でもそれは仕方ないことなんだよね」

「亜美・・・」

今の私は凌のこと考えるだけで涙が出る
いつも泣いたら涙を拭いてくれる凌はもういない

「由里はどうした?」

「私も話したよ。でも慎は・・・もう他の人が好きで・・」

「えっ?」

「慎と一緒にいた子が好きなんだって。これで私達も終わり」

「・・・由里」

由里は我慢していた涙を押さえきれず泣いてしまった

「私もちゃんと別れを決めてたし、慎の性格ならこうなるってわかってた。1年以上一緒だもん、わかるよ・・・」

なぜうまくいかないのか
どうして好きなのに好きな人と居られないのか
私達は泣くだけ泣いた





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