やさしい手のひら・前編【完結】
「健太くーん、こっちこっち」

健太くんは砂浜が熱いと言って、こっちにこない

「熱い」

「大丈夫だよ。おいでよ」

苦笑いしながら海辺に近づく。私はミュールを持ちすでに海へ入っていた

「海はいいな」

健太くんが言う

「ほんとだね。なんで広いのかな。この海の向こうにも人がいっぱい人がいるんだよね」

ほんと海に来ると何もかもが馬鹿らしくなり、すっきりするんだ

「冷てぇ」

私が一人ではしゃいでいると

「わあー」

転びそうになった所を健太くんの腕に支えられ、胸にうずくまってしまった

「危ねぇな。俺掴んでなかったら亜美今頃海の中だったぞ」

「エヘヘ」

ギュッ

「亜美」

また健太くんの胸へ再び戻ってしまった

「無理に笑ってるのか?もう忘れろ。本郷のことは考えるな」

健太くんが私に言った

「私、ここに来たのは凌のことを忘れるために来たの。私は前を向いて進みたいから」

健太くんは私を向かい合わせして、

「俺がいるから。お前は一人じゃないんだよ。楽しい時も悲しい時もいつも一緒だから。一人で苦しむな」

涙が零れ落ちた
こんに優しくしてくれる健太くんの思いが嬉しくて、
この腕の中にずっと居たいと・・・そう思った



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