やさしい手のひら・前編【完結】

ﾗｲﾌﾞが始まっても私の頭の中はこれからのことでいっぱいいっぱいだった。健太くんの歌も聞けずにいた

終わったら、健太くんに会わないで帰ろう

すぐ帰れば健太くんに会わなくてすむ

あんなに楽しみにしていたﾗｲﾌﾞは私にとって辛いﾗｲﾌﾞとなってしまった

ｱﾝｺｰﾙで3曲歌い、終わった達成感で健太くんはとてもいい笑顔でいた
そんな姿を見て、
もう隣に居れないのかと考えると辛くて、
泣き出したくなった
でも隣には由里もいるし、ｸﾞｯと堪えた

「今日ね、ｸﾘｽﾏｽだからいつもの打ち上げないんだってみんなそれぞれｶｯﾌﾟﾙでってことみたい」

「あっ、うん　わかった」

「亜美どうしたの？顔色悪い」

やばい気付かれる

「うん、大丈夫。生理痛がびどくて・・・」

「ｸﾘｽﾏｽに生理って健太くんもかわいそうにっ」

由里がそう言って笑った

「じゃあ私行くね」

「じゃあねー」

早く行かなきゃ・・・

そう思い、私は急いで階段を登り走った