やさしい手のひら・前編【完結】
「さて、俺も寝よっかな」

そう言って私の隣に入ってきた

「大丈夫か?寒くない?」

「健太くんが暖めてくれるんでしょ?」

「そうだよ」

優しく私に笑ってくれた

「さっきさ、俺に金持ちかって聞いたじゃん」

そうだ、さっき健太くんに聞いたんだ

「うちの親、俺が高校入る時、離婚したんだ。小さい時から家庭環境悪くってさ。離婚したあと、親父とお袋すぐ再婚してさ。俺、どっちにも行きたくなくて、一人暮らしを選んだんだ。で、親父が社長ってことでマンションを買ってくれて仕送りもしてくれてるって訳。どっちかに俺が行っても邪魔じゃん」

天井見つめ普通にしゃべっているけど、
私には寂しそうに見えた
ほんとは家族で居たいんじゃないかって…

「健太くんには私がいるからね。一人じゃないよ」

なんて言葉を掛けていいのか、
わからなくって私の精一杯の言葉だった

「親がさ、こうだから自分の大切な人は大事にしようってずっと思ってた。俺は亜美を大切に大事にしたいんだ」

ジーンと来てしまい、私の右目から一粒の涙がこぼれた。それを健太くんがソッと拾ってくれた

「健太くん…」

「俺は浮気もしないし、裏切りもしない。亜美はずっと俺を信じていればいんだよ」

「うん。信じる」

私は健太くんの思いが嬉しかった
ギュッと抱き付いた
寂しい時そばにいてあげたい
辛いとき励ましてあげたい
そう思いながら私は眠りについた



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