やさしい手のひら・前編【完結】
私も本郷も目を反らさずに真っすぐに見つめ合った

何を言われるのかはわからない
でもちゃんと話を聞かなきゃいけないんだと思った

「好きなんだ…」

波の音だけが聞こえる中、本郷は私に『好きなんだ』と言った

私は一瞬、夢なのか現実なのかわからなくなり、
時間が止まった感じになった

「お前気付かなかった?」

本郷は私を見て言った

「うん…、私だけの片思いだと思ってた」

「えっ?」

本郷が目を大きく開けて言った

「片思いって何?俺だけの片思いじゃねぇの?」

「違う…私も…」

ちゃんと言わなきゃいけない
本郷も言ってくれたんだから…

「私も好きだったよ、ずっと…」

本郷は下を向いていた顔上げて、
砂を触っていた私の右手を握った

その瞬間、私は恥ずかしくなり顔を伏せてしまった

「大事にする…だから付き合おう」

この言葉が欲しかった
この言葉を聞きたかった
聞けるはずないと思っていた言葉を本郷が言ってくれている

嬉しくて嬉しくて、私の目から涙が溢れてきた



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