やさしい手のひら・前編【完結】
頬を流れる涙が 乾いた砂の上に落ちて行く

「なんで泣くんだよ」

「だって嬉しいんだもん」

本郷はギュッと私の手を強く握った

その手は温かく私の心を安心させてくれる

「俺も嬉しい。お前が俺を好きだなんて思ってもいなかった。今日の海は慎たちにも計画立ててもらってたんだ」

「そうなの?知らなかったのは私だけ?」

由里は本郷の気持ち知っていたんだ

「前に学校の帰り一緒になったじゃん。ホントはあの時告るつもりだった」

『俺さ…』そう言って坂下が現れた時のことを言っているんだ

「慎が突然来て、俺そのあとお前にひでぇこと言ったんだよな。まだ慎に自分の気持ち教えてなくて…」

私は真剣な顔をしている本郷の顔を眺めていた

「そんな見つめられたらテレるから」

本郷は口を上にあげて笑った

「なぁ、これからちゃんと名前で呼び合おう。名字とかカップルらしくない。!わかったか。亜美」

本郷が私の名前を呼んでいる
愛しい声で『亜美』って呼んでくれた
たったこれだけのことで私は感動してしまい、また涙が出てきた

「り、り、凌……」

私はうつむきながらつぶやいた

「テレるよな」

凌はニカッと笑った

そんな笑顔がたまらなく好きで、
この笑顔が私はずっと好きだったんだ



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