やさしい手のひら・前編【完結】
チン

やはり10階みたいで右と左に分かれていて

「亜美、右」

私は小走りで右へ行き、1077号室を探した

「あった!」

健太をドアの前で待ち、鍵が開くのを待った

カチャ

「キャアーーーー」

大きな窓があり、バルコニーにもあり、そしてなんと言っても青い海が目の前にあって私は落ち着かなくて、あれもこれもとドアを開けた

「亜美、落ち着けよ」

「落ち着けないよ!」

バルコニーに出て、キラキラ光る、青い海を見て深呼吸してみた

「来てよかった」

健太も横に来て、

「ほんと来てよかったな」

私を見て、頭をクシャクシャと撫ぜてくれた

「私だけならこんな所に来れないし、健太のお陰かな」

「俺だけじゃないよ。亜美がいて俺がいて優勝できたんだ。二人で取った優勝だから」

「そうだね」

「田村さんが1時半にロビーに集合って言ってたな。水着着て」

「水着着たくない」

「仕方ないだろ。撮影の約束でここに来たんだから。でも鈴木さんには亜美の姿見せたくないけど」

私を引き寄せギユッと抱き、耳元で

「我慢しなきゃな」

健太は今回の撮影をちゃんとやろうと言った。こんな素敵な所に泊まらせくれた田村さんのため、私も頑張ろうと思った

部屋に用意してあった、昼ごはんを食べ、お腹いっぱいになると眠くなってきたけど、眠いのを我慢し海に入れるぞ、と思って水着に着替えることにした



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