やさしい手のひら・前編【完結】
ハアハア

久しぶりに走ったせいか心臓が痛い

「苦しい…よ」

「運動不足だな」

私と違い、健太は息に乱れがなく、まだまだ余裕みたいだった

「俺、受付してくるから、そこ座ってれ」

「うん」

健太が来るまで、ここに座っていようと思い、ベンチに腰掛けた

「1人?」

「え?」

2人組の男が話し掛けてきた

「暇なら遊びに行かない?」

誰かに助けてもらいたくて、周りを見たが偶然にも誰もいなく、健太も受付のため近くにはいなかった

「結構です。彼氏待ってるんで…」

私の左右に男達が来て、腕を掴み立たされた

「やめて下さい」

怖い。あの時のことを思い出してしまった

「いやー離して」

「楽しいから行こうよ」

嫌だと言っても、無理矢理引っ張り、抵抗しても更に力を入れられ、どうすることも出来なかった

「離せ」

低い声が聞こえ、顔を上げるといつもと違う顔の健太だった。見るからに怒りが出ていて、私も怖いと思ってしまった



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