やさしい手のひら・前編【完結】
帰り、自分の席で健太に一緒に帰れないことをメールしたら、『ライブハウスで待ってるよ』と返事が来た

私は携帯をしまい、帰る由里に『あとでね』と手を振った

「川崎さんとうまくいってんだな」

黒板を真っ直ぐ見ながら凌が言った

「うん」

「幸せか?」

「幸せだよ」

私は戸惑いもなく凌を見て言った。でも凌は私を見ないでやっぱり黒板を見ながら

「そっか」

と、一言だけ言った

すぐ担任が来て、修学旅行までのこれからのスケジュールなどを話した。班長と副班長でいろいろやらないといけないことがたくさんあった

40分ぐらいで話しは終わり、私は帰る準備をして廊下に出た

玄関前で

「亜美」

と声を掛けられ、振り向くと凌がいた

「一人で大丈夫か?」

「うん、大丈夫だよ」

そう言った時、

「亜美」

玄関の先に健太が待っていてくれた

「帰り心配だから待ってた」

そう言って私に近づいて来た

「先に行っててもよかったのに」

「危ないし」

あっ、凌が・・・

私は振り返ったら、

「川崎さんいるなら大丈夫だな。じゃあ」

と言い、私の横を通り過ぎて行った

「亜美行くぞ」

健太くんに手を引っ張られ私は靴を履き、玄関を出た

「同じクラスになったの?」

「あっ、うん。じゃけんで負けて副班長になっちゃった」

「あいつも一緒の班?」

「・・・うん」

「そっか」

そう言ったまま健太は黙ってしまった

気にしているんだ。同じクラスでしかも同じ班。私だってきっと健太が同じ状況なら嫌だし

会話のないまま、ライブハウスに着き健太は鞄を置きそのままリハ室に入ってしまった

「由里・・・」

私は泣きそうな声で由里を呼んだ

「どうしたの?」

さっきのことを由里に話すと

「健太くんの気持ちもわかるよね?本郷あれだけ亜美のこと好きだったんだもん。今もそうかもしれないとか、近くにいるってことで不安なんだよ」

「うん・・でも私は今は・・・」

「今は健太くんでしょ?」

「うん」

悲しくって我慢していた涙がこぼれてきた

< 308 / 387 >

この作品をシェア

pagetop