やさしい手のひら・前編【完結】
凌の部屋に入ったが、二人とも健太の変わった姿に驚きを隠せずにいた

先にしゃべったのは凌だった

「川崎さん変わったな」

「私が変わらせてしまった」

さっきの健太を思い出すと目に涙が溜まってくる。でも泣いちゃいけないと思い、グッと堪えた

「亜美が悪いんじゃない。川崎さんが自分でやってることだろ」

「でも私が…私が裏切ったから」

だめだ。堪えていた物が溢れだす

「亜美は悪くない。もう忘れろ。川崎さんのことでもう泣くな」

凌は私を引き寄せ抱き締める

「亜美が川崎さんのことを考えるのは嫌だ」

私はこうやって人を傷つけてしまう。凌も健太もみんな私のせいなんだ

「亜美が悪いんじゃなくて、俺が悪いんだ。俺が川崎さんと亜美を引き裂いたから」

「凌は…悪く…ない」

涙で凌の顔が見えない。でも凌も苦しんでいるんだ

きっと私よりもっと苦しんでいる

「凌、ごめんね。苦しめてごめんね」

「亜美がいてくれるなら、どんなに辛くても耐えれるから」

「凌…」

私も凌を強く抱き締めた

凌の顔を見て

「もう考えないから、自分を責めないで。お願い」

凌は私の頬から流れる涙を拭い、私の唇を触り、ゆっくり顔を近づけキスをし、私を床に寝かせた

「亜美、ひとつになろう」

私達は別れてからまだ体を重ねていなかった。凌は私に手を出さないでいた

私は首を縦に振り、凌を見つめた

凌は私を抱えベットへ運び、そっとベットに寝かせてくれた
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