やさしい手のひら・前編【完結】
私は部屋に戻り、願書などを見てどこにするか悩んでいた

♪♪♪~

携帯が鳴ったので見てみると由里からのメールで、私はすぐに携帯を開いて見て

『テレビ見て』

「はあ?テレビ?」

私はすぐにテレビのスイッチを入れ、どこのチャンネルかわからないため、リモコンでチャンネルを切り替えていった

「健太」

テレビの画面にはBlacksが映っていて、健太が笑っていた

歌番組に出ていて、これから歌うらしくインタビューに答えている所だった

私はじっと健太を見ていた

画面の健太は笑顔は変わっていないがやっぱり芸能人オーラが出ていて、ここにいた時とは違う不陰気だった

ただ見ているだけで話の内容など耳に入らず、胸が苦しくなるばかりだった

じわじわと目がかすみ健太の顔がぼやけてくる

私は必死で目を拭き、瞬きも忘れるぐらい健太に釘付けだった

Blacksはみんな楽器に付き、健太がマイクを持って伴奏が始まるのを待っていた

ドラムの音が鳴った途端、健太は顔を上げ、私が大好きだったあの声で歌いだした

何ヶ月ぶりだろう。本を買った日から私は健太を避け、テレビも雑誌も見ないようにしていた

目の前で健太が歌っている。こんな近くで見ているのに手が届かない

涙がこみ上げてくる。もうほんとに届かない人になってしまった。私のことなんて忘れているに違いない。芸能界にはきれいな人がたくさんいて、きっと健太もそんな人達と恋をして、私のことなど忘れていくんだ

「あっ・・・」

そう思い健太を見た時・・・・

右手の薬指・・・

どうして。どうして・・・

どうしてそうやって私を喜ばせるの・・・

健太は私とのお揃いの指輪をしていた

嬉しかった。嬉しくて嬉しくてしょうがなかった。でもその反面虚しくなってしまった。私には凌がいて、健太は届かない所にいる。どうしようもないことだった。その壁を壊すことなどできる訳がない。だから指輪はもう外してほしかった。指輪をしていることで期待している自分がいるから・・・

一曲だけ歌い、健太は画面からいなくなってしまった

辛いけど健太を見れたことは本当に嬉しかった

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