やさしい手のひら・前編【完結】
今日、私は白樺高校を卒業する

去年の今日、私は健太の背中を見ながら健太の卒業を見送った

あれから一年、今日私が卒業する。健太がいなくなって一年が立った

一人一人、卒業証書をもらうため、一歩ずつ前へ進みステージへ上がる。少しだけ緊張しながら、名前を呼ばれ校長先生から卒業証書を受け取った

自分の席に戻り、今日までのことを思い出していた

入学式の日、ここで大きな声で『亜美』と呼ばれた。それが恥ずかしかったなぁ…そんなことを思いながら私は、無事に卒業式を終えた

由里と最後となる屋上に来ていた

「終わったね」

「いよいよ東京だね」

由里はこれから行く東京を楽しみにしている

「住むとこも近くだし、あっちに行ってもちゃんと連絡取ろうね」

「そうだね。短大が違っても由里とはずっと友達だからね」

「いろんなことあったね」

「泣いたり、笑ったり、怒ったり。でも楽しかった」

辛いことばかりじゃなかった。悲しいことばかりじゃなかった。楽しいことだって、たくさんあった

「第二の人生が始まるね」

「由里、いつあっち行くの?坂下と一緒に行くんでしょ?」

「明後日出発するよ。慎とね」

「亜美は?」

「私は明日出発する。凌は明後日かな」

「早く行くんだ?」

「うん」

私は早く東京に行くことを前から決めていた

「じゃあ、あっちに着いたら飲み会だね」

「そうだね」

私達は東京で会う約束をした

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