やさしい手のひら・前編【完結】
どうやって帰って来たのか私は玄関にいた

中に入るとドアの音でお母さんが出て来た

「ご飯食べる?」

「…いらない」

私はそのまま部屋に閉じこもった

携帯を見ても着信もメールもない
自分で電話を掛ける勇気もなく、
ただ涙が零れるだけだった

私が悪い
凌は悪くない
わかっているのに謝らず凌を怒らせてしまった

「もういや…」

すぐ泣く自分に腹が立つ
いつもこうやって泣いてばかりだ

凌はいつも私を不安にさせないようにしてくれていた
自分がそれを一番わかっているはず
それなのに私は何も言えないで凌を帰らせてしまった

「ウワァーン」

私は布団の中で泣いた

なかなか眠れないまま朝が来た

鏡を見るとみごとに目が腫れている

お母さんが部屋に来て

「時間だよ。起きなさい」

「お腹痛い。今日学校休む」

お母さんは何かに感付いたのか

「今日だけだよ。受験の疲れが出たのかな?」

そう言って降りて行った



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