あにちゃん先輩



***

「着い、た!」

汗だくになりながらも学校の門の前でほっと一息ついてまた駆け出した。

入学式は体育館で行われる。桜並木を突っ切ればすぐそこだ。

しかし、走っている時に桜に視線をやったばっかりに人に思いっきり体当たりしてしまう形になった。

「うわっ」
「ふんがっ」

乙女にあるまじき声を出して小柄な彼女はその場に尻餅をついた。
頭からいったため、頭がクラクラして呆然としていた。その時、上から怒り混じりの声が掛けられた。

「おい」

声は耳に入り、思わずびくりとしてしまう。恐る恐る見上げてまたもやボーッと彼を見た。

「・・・おい」

さすがに怒りを抑えられなかったのか、今度は先ほどよりも低くくぐもった声である。

はっとして立ち上がり、90度超えの礼をした。

「す、すみませんでした。あの自分の不注意で」

「あ?当たり前だ。あんたの不注意以外考えられない」

ふんっと鼻を鳴らして自分より大分下にある彼女を見下ろす。


「は、はぁ・・・あの、とても申しわけないんですが私急いでますんで、失礼します‼︎」

たっと駆け出して体育館へ向かった。後ろから呼び止める声が掛けられたが、この際どうでもいいという風に聞き流した。



体育館に着き、近くにいた温厚そうな教師らしき人に近づき、

「すいません。遅れました。日向 小春(ひゅうが こはる)です」

「ああはいはい日向さんね。次あなたのクラスの入場ですからあっちの列に並んでね。」

「分かりました。ありがとうございます」

軽く頭を下げて列の後ろに並び、緊張した面持ちで今日から高校生かぁ、と高校生活に思いを巡らせていた。



***

式も終わり、1年3組というプレートの教室に同じクラスの人が入って行ったのでそれに倣って小春も教室に入った。
そこで初めて自分は3組なんだと分かった。

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