悲しいライオン
Ⅰ.
大きなサバンナの片隅に、一匹の雄ライオンがおりました。
黄金に輝きながら風になびく鬣、どこまでも見通すような漆黒の瞳、大きくて鋭い牙、そして引き締まった美しい体・・・。
彼の狩りの腕は誰よりも優れ、誰よりも沢山の獲物を仕留める事が出来ました。
サバンナの動物達は皆、彼を尊敬し、彼こそがサバンナの王者だと思っていました。
けれども、彼は皆の上に立つ事はせず、ただ一匹で毎日の狩りを楽しみ、その日その日を過ごしておりました。