悲しいライオン
Ⅷ.
雄ライオンは、約束を守りました。

彼はかつてそうしていたように、毎日懸命に狩りをし、その獲物を妻子が寝静まった棲家へ持って行きました。

いつの日か、大きくなった子供達にどこかで会えるのを夢に見ながら、雄ライオンは狩りを続けました。


何日か過ぎたある晩の事でした。

雄ライオンがいつものように獲物を持って棲家へと行ってみると、そこには妻子の姿はありませんでした。

雄ライオンは、おそるおそる、棲家の土に鼻を着けてみました。

そして、愕然としました。


そこには、自分の知らない雄ライオンの匂いが沢山着いていたのです。

雄ライオンは、獲物を落とし、がっくりと肩を落としました。




(もう、俺は必要ないのか・・・。
もう、あいつも、子供達も、俺の知らない所へ行ってしまった・・・)

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