極悪彼氏
お兄ちゃんと思い出
【夢羽】



『俺はな、どんな立派な会社に入るより、どんなに金持ちになるより。自分が死んだときに本気で泣いてくれるヤツがいる生き方をしてぇのよ』



そう言っていた兄が2年前この世を去った。



大きな優しさを持っていて、いつも傷だらけの顔で笑っていた。



世間が分類した枠でははみ出しモノ。



枠に納まれない自由でやんちゃな人間。



そんなお兄ちゃんがあたしは大好きだった。



対照的な兄妹だったあたしとお兄ちゃん。



今はもう、夜中に酔っぱらっ帰って来てから叩き起こされて聞く武勇伝もない。



寝ぼけた顔で朝ご飯を催促する声もない。



あの優くて大好きだったお兄ちゃんはもういない。



「お兄ちゃんのやり残したこと、あたしがやるからね。お空の上から見守ってて」



中学を卒業すると同時に染めた金色の髪。



お兄ちゃんと同じ数のピアスの穴。



そして、あたしのお守りの形見のネックレス。



あたし、頑張るね。



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