極悪彼氏
小田切 京太郎、今年33歳。



ガキの頃から役者をやっていて、俺ができたのが16の時。



母親は誰なのかも知らずに育った。



離婚とかじゃなく、未婚で俺を生み、オヤジに丸投げした。



16歳だったオヤジは世間体もあり、俺の存在をひた隠しにしていて。



隠されたまま育った俺は毎日孤独だった。



オヤジの母親である祖母も俺の存在が気に入らなくて。



物心ついた時から、仕事で遅い父親をひたすら待つ子になっていた。



『父ちゃん、頭グラグラする…』

『薬飲んで寝といて。帰ったら医者連れてくから。ごめんね、琥太郎』



熱があっても俺を置いて仕事に行く父親をガタガタ震えながら待つ。



おかげで肺炎を起こして入院した経験が3回。



オヤジのマネージャーが毎日見舞いに来てくれた程度だ。



今思えばよく生きてたと思う。



『なんだ、寝てないの?』

『父ちゃんとお風呂入りたいから』

『コタって超健気!!着替え準備しようか』



早く帰ってくるときは俺の大好きな父ちゃんだった。



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