極悪彼氏
お兄ちゃんがいなくなった家で明るくしなきゃって思ってた。



お兄ちゃんの分まで賑やかにしなきゃって。



そういうの、ちょっと疲れたのかも…。



「なんかあったのか?」

「な~んにも言わないで。こうしててほしい…」

「意味がわかんねぇ」

「お兄ちゃんのこと思いだしちゃっただけだよ」

「…………そうか」



それ以上何も聞かず、コタローは抱きしめててくれた。



本当にあたし、泣かなかったな…。



コタローが泣いた時は泣けたのに…。



「海行く」

「えっ!?」

「デート」



コタローなりに気を使ってくれたのかも。



強引に手を引っ張られて砂浜に出た。



引っ張ってるだけでも、周りから見たら手を繋いでるみたいに見えるかもしれない。



それがあたしには心地よかった。



「デートじゃなくて散歩じゃない?」

「俺はいなくなったりしねぇ」

「コタロー…?」

「想羽さんと俺は違う。俺はお前のそばにいる」



溶けちゃうかと思った。



< 223 / 480 >

この作品をシェア

pagetop