極悪彼氏
やっぱり暖かいこの家。



幸せそうな顔をしてすき焼きを食べるヒヨコも、ギャーギャー騒ぎながら鍋奉行のオヤジも。



俺を気遣って肉を取り分けてくれる母ちゃんも。



俺が持ってない暖かさ。



なぜか無性にオヤジの顔が見たくなった。



「腹一杯だから帰る」

「泊まればいいのに」

「やることあるから」

「そうか、じゃあな」



玄関でモコと靴を履いた。



やっぱり俺は少しだけ変わったのかもしれない。



想羽さんが俺に与えた穏やかさ以上に、最近何かを得た気がする。



それが何かはわからない。



だけど…何となく変われてる。



「また明日ね!!」

「おぅ…」

「コタちん?どうかした?」

「母ちゃんに…授業参観ありがとうって言っとけ」

「あははっ!!わかった!!気をつけてね。このモコモコ人間と浮気しないでね」

「しねぇよバカ。じゃあな」



気持ちは暖かい。



渚さんが前に進む決意をしたように、俺も前に進もうと思う。



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