極悪彼氏
まるで滝のようだ。



全く止まる気配がない。



きっとこれが、俺が想羽さんの死を受け入れた瞬間なんだと妙に納得した。



「お兄ちゃん、幸せだね…。本気で泣いてくれる人がっ…いるからっ」

「お前だって泣いてんじゃねぇか…」

「だって!!無理したって…寂しくないって思ったって…悲しいからっ」



想羽さん、妹が泣いてんぞ。



いい兄貴だったんだろ?



泣かせてんじゃねぇっ…。



ひとしきり泣いた後、制服を直そうと思ったのにシャツのボタンが弾け飛んでることに気がついた。



「デケェけど着とけ」

「ありがと…」

「なぁ、俺は変われんのか?」

「変われるよっ!!だってコタローはお兄ちゃんが大好きだった人でしょ?」



そう言って向けられた笑顔はどことなく想羽さんに似ていた。



汚れた時用に置いてあった俺のシャツを着る後ろ姿は華奢すぎるほど。



あの大きかった想羽さんの妹がこんなチビ。



同じ悲しみを背負った背中…。



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