極悪彼氏
始まった入学式は賑やかなもので、校長の話しなんか誰ひとりとして聞いてない。



そしてついに…。



「新入生の言葉。1年1組、鈴原 夢羽」



トップで入ったから、あたしが答辞。



やりたくなかったけど…いいチャンスだからやるの。



「夢羽ってお前!?」

「行ってくるね、カケル」

「頑張れよ~」



会って間もないあたしにエールをくれるなんて、あのハゲ…じゃなくてカケルっていいヤツかも。



な~んて思いながら上段に足を進めた。



置いてあったマイクを持ち、これが答辞なんかじゃないことを表す。



お兄ちゃん、あたし頑張る。



「1年1組、鈴原 夢羽。この学校のトップとります」



今までざわついていた体育館がシーンと静まりかえった。



そりゃそうだ。



あたしは伝統ある挨拶をしたんだ。



それが男ではなく、女だから。



「鈴原っ!!おまえを見込んで答辞を任せたのに!!」

「うっせんだクソジジイ。黙れよハゲ」



それはあたしがステージから引きずり降ろされる5秒前の発言。



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