宵闇の世界 -world of twilight-

Prologue

―――さようなら―――


麗藍［レイラン］はそう呟いた。
目の前で崩れ落ちる人は、胸元から血が溢れていた。
麗藍は冷たい眼差しで、それを見つめていた。
しかし、その瞳からは一筋の涙が流れていた。


―――ありが…とう…―――


小さく呟いて、目の前の人は息を引き取った。
麗藍はその人の頬に、そっと手を添えた。
すでに冷たく血色を失った唇に、自分の唇を重ねた。


―――大好き…だったよ…＝＝―――


麗藍はそっと目の前の人、＝＝を抱き上げた。
すでに事切れた＝＝は普通の人からは重たい。
しかし、麗藍は気にすることなく、＝＝を湖のほとりに連れて行く。
もうすぐ夜が来る。
その前に＝＝をきちんと埋葬しなくてはならない。
やつらの餌食にはしたくない。


素手で＝＝が入るほどの穴を掘り、＝＝をその中へと入れる。
ポタリ。
＝＝の体に血がすべり落ちた。
それは麗藍の右腕から流れていた。
しかし、それを気にすることなく、麗藍は＝＝に土をかけた。
すべてが終わると、銀の十字架を＝＝を埋めた前に突き刺した。
小さく何かを呟いて、麗藍はその場に倒れた。


その様子を見ていたスラストは、彼女をそっと抱き上げた。
日が完全に落ちる数分前だった。
スラストはそのまま迫る闇へと、彼女を抱えたまま溶けるように消えた。