宵闇の世界 -world of twilight-
少しの肌寒さを感じた麗藍はわずかに身じろぐと、ふわりと温かさに包まれた。
その温かさにもう少しまどろんでいたかったが、気だるげにまぶたを開けた。
目に飛び込んできたのは、==に似た顔。
一瞬心臓が止まるかと思った。


「起きたか?」

「スラスト…私…?」


随分前にもスラストとこんな会話をした記憶がある。
それは黒羽や蒼維に出会う前のことだった。
温もりはスラストが、麗藍の体を抱きしめていたからだった。
スラストも麗藍も、何も身につけていない。
麗藍はスラストに視線を送り、ゆっくりと半身を起こした。
何も言わずにスラストは麗藍に手を貸した。


「また迷惑かけた?」

「迷惑ではない」

「…ありがと」

「すまない。緊急だったから、許可を取れず」

「気にしないで。スラストには感謝してるんだから」


麗藍はふわりと微笑むと、胸元についた紅い華を指でそっと撫ぜた。
それはスラストが麗藍に力を与えてくれた印。
スラストは麗藍を心配そうに見つめる。
麗藍は安心させるかのように、ベッドから床へ降りた。
窓からは朝の静けさがまだ残っており、少し重い体がどこかすっきりしてくる。
スラストが麗藍の肩を軽くたたき、着替えを差し出す。
麗藍はそれを受け取り、身につけていく。


「また傷が増えてしまったな」

「こっちはすぐに治るわ」

「…やはりそちらは治さないのか?」

「……ええ…」


麗藍の右腕には2箇所包帯が巻いてあった。
二の腕と手首の少し上の2箇所。
麗藍は二の腕の包帯が見えないように、ストールを身につけた。
スラストもすでにいつもの服装に変わっていた。
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