宵闇の世界 -world of twilight-
食事を終え、捺瀬と麗藍が再びキッチンへと消えた。
辰樹は一旦部屋に戻り、愛刀と荷物を持ってリビングに戻ってきた。
辰樹の愛刀をスラストは、じっと見つめていた。


「それは辰樹の使っている刀か?」

「ああ。父親の形見。『風凪』」

「ほう。いい名前だ」

「もともと名前はついてなかったんだ。俺が引き継ぐときに名づけた」

「自分の愛用の物に名前をつけるということは、それに命を与えることになる。辰樹がその刀に名前をつけた時点で、命が宿った」

「そっか」

「我らもそのようにしている」


辰樹が関心したように頷くと、ドアを叩く音が聞こえてきた。
スラストは椅子から立ち上がると、静かにドアを開けた。


「おはよう」

「おはよう。黒羽、蒼維」

「おはよ。スラスト、あれ、どうにかならないか?少しきつかった」

「悪いな。用心のためだ」

「そう」


蒼維が庭の周りにある柵を見つめながら、小さくため息を吐いた。
黒羽は蒼維の肩を小さく叩き、二人で部屋の中に入った。
タイミングよく、捺瀬と麗藍がキッチンから戻ってきた。
それぞれ椅子に座り、その前にカップが置かれる。
朝と同じように白いポットが置かれた。


「麗藍、昨日はすまない」

「気にしないで。蒼維が無事でよかった」

「『時空の迷子』の君も迷惑かけた」

「あ、俺?俺はびっくりしたけど、大丈夫」


辰樹がそう告げれば、蒼維はほっとしたように胸を撫で下ろした。
捺瀬が会話をさえぎらないように、飲み物を注いでくれた。
テーブルの上に、焼き立てであろうクッキーも置かれた。
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