宵闇の世界 -world of twilight-
「力を使いすぎるなよ?」

「大丈夫よ。スラストと捺瀬のこれがあるから」

「完全じゃない」

「わかっているわ」


麗藍は耳のピアスを軽く撫ぜると、前をしっかりと向いた。
そんな麗藍を見て、スラストは走りながら、麗藍の手を握る。
麗藍はスラストの手を握る。
お互いの意思を確認するかのように。


「少しまずいわね。ぎりぎりかもしれないわ」

「活発化する前に終わらせれるだろう?我と麗藍ならば」

「そうね。スラストの力は信頼できるもの」

「麗藍の力もな」


麗藍とスラストは微笑むと、走る速度を上げる。
別に走らなくても移動はできる。
それをしないのは、今がまだ日が沈む前であるから。
麗藍とスラストの本来の活動は、夜のほうが主だ。
しかし、二人はそれに逆らう。
大切な者を守るためでもあり、運命に逆らうかのようでもあり。


「麗藍、スラスト」

「黒羽[クロウ]!?びっくりした」

「黒羽も感じたか?」

「もちろん、俺も手伝うからね」

「だけど、蒼維[アオイ]は?」

「俺の魔力で眠らせてきたから」

「黒羽が一緒ならさらに心強い」

「何もなければいいけど、そうはいえないから」

「捺瀬の時もそうだったから、気づいてる輩もいるでしょ。俺たちみたいにさ」

「否定はしない」


スラスト、麗藍、黒羽は導かれるようにその場所へと向かっていた。
目的の場所までもう少し。
いつのまにか日の光も届かない森の中へと入っていた。
しかし、三人ともそれを気にする様子もなかった。
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