世界の果てで呼ぶ名
 
 それでも一縷の望みを捨て切れず、男の背中を見つめる。
 
 いつか振り返ってくれる日が来るのではないか、と希望を捨てきれずにいた。

 言葉を交わさなくとも、その温もりに触れられなくとも、一目でいいから彼の微笑みを見たいと願っていた。

 それは叶う筈のない願いだと分かっていても、消えない想いであった。
 
 彼女の青いワンピースが、風を受けてはためいた。
 その背中に広がる純白の翼から、羽根が一枚離れて、漆黒の空に舞っていく。

 銀色の長い髪が風に煽られるのを、彼女は華奢な手で押さえた。そうして静かに瞼を伏せた。

 心の中で男の顔を思い描く。

 どれだけ時が経とうとも、鮮明に浮かび上がる男の表情は、とても穏やかな微笑みだった。
 ひたむきな愛を瞳で語る。暖かいぬくもりを与えてくれる。
 男の眼差しに彼女はいつも愛を感じていた。
 

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