古城のカラス
シアンが牢を出たのは、結局四日目の朝であった。
鉄格子から出された王子を迎えに来たバーレンは、相変わらず不機嫌でちっとも笑わないシアンの手を引いて、彼の自室へと引き返した。
久し振りに見る陽光は、ずいぶん目に痛いものであるらしく、シアンはずっと目を擦っている。
そんな仕草をしていれば、本当に子供だなと、バーレンは王子に見つからない様こっそりろ微笑んだ。
「サクソン軍はどうなっている」
「は。
川の対岸に陣をとって、もう8日になりますので、そろそろでしょうと」
「そうか」
王子はそこかしこで武装し巡回する衛兵たちを順番に眺めながら、悲しそうに俯いた。
国が落ちるのは時間の問題である。
「ミシュレンは堕ちたか」
「…女子供は此方に退避させ、今は軍が陣取っております」
「それは残念だ。
奴らの侵攻が始まれば、あの村は一番先に戦場となる」
「ええ」
「自分の家が戦火で焼かれるというのは、どういう気分だ」
王子は、なかばからかうようにニヤリと唇を引きつらせてバーレンの顔を見上げた。