古城のカラス



シアンが牢を出たのは、結局四日目の朝であった。


鉄格子から出された王子を迎えに来たバーレンは、相変わらず不機嫌でちっとも笑わないシアンの手を引いて、彼の自室へと引き返した。


久し振りに見る陽光は、ずいぶん目に痛いものであるらしく、シアンはずっと目を擦っている。



そんな仕草をしていれば、本当に子供だなと、バーレンは王子に見つからない様こっそりろ微笑んだ。



「サクソン軍はどうなっている」


「は。
川の対岸に陣をとって、もう8日になりますので、そろそろでしょうと」


「そうか」



王子はそこかしこで武装し巡回する衛兵たちを順番に眺めながら、悲しそうに俯いた。


国が落ちるのは時間の問題である。



「ミシュレンは堕ちたか」


「…女子供は此方に退避させ、今は軍が陣取っております」


「それは残念だ。
奴らの侵攻が始まれば、あの村は一番先に戦場となる」


「ええ」


「自分の家が戦火で焼かれるというのは、どういう気分だ」




王子は、なかばからかうようにニヤリと唇を引きつらせてバーレンの顔を見上げた。



< 100 / 105 >

この作品をシェア

pagetop