古城のカラス
父の声は笑っていた。
嘘でも笑っていた。
シアンに対しての、あの石のような固さを一瞬にして解きほぐして。
父は厳しい人だ。
だからきっと、僕のために優しくしないんだ。
シアンは自室の扉を開いた。
寝床の上に、広げられた深緑のクロークがある。
黒い格子が張り付けられた四角い窓から、眩しい光が差していた。
小さな彼の部屋では、寝床の他にはいくつかの木箱が沢山積んであるだけである。
箱の山の一番上に置かれた、彼の掌に収まるほどの箱を手にとって、シアンはクロークの上に座る。
開けると、真っ赤な石が一つ入っていた。