古城のカラス
クロークを被り、寝床に横になった。
石を取り出して懐に仕舞う。
そのまま眠ろうとして目を閉じた。
剣の修行を始めるには少し早く、かといって外出先も思いつかない。
暫く森には行けない。
もしかしたらもう行けないかもしれない、敵の陣地に近いからだ。
シアンがいろんな物の回想に更け目を閉じると、不意に翼の音がした。
一度は気にせず、でも、その音が現実にすぐ窓の近くにいるかと思うとシアンは飛び起きて窓を見た。
彼の部屋の窓は嵌め殺しである。
少し背伸びをして縁に手をかけ、見える限りの景色を探してみれば、黒い影が建物の間に吊るされたロープに留まって此方を見ている。
鳥だ。
黒い鳥が、間違いなくシアンを見ていた。
少年は窓から飛び降りて、クロークのフードをしっかり被って自分用の剣を腰につけ、部屋を出て行った。
城の階を下りる途中、バーレンとすれ違った。
「王子、どちらへ」
呼びとめたつもりではあったが、どうやら聞こえていないらしく、巡回する兵たちを押しのけながらシアンは走って行った。