古城のカラス



そんな彼女に、薄くとも困ったような表情を見せて男はポリポリと頬をかいた。


まずいこと言ったかな。

ふきだしがあるなら、そんな台詞が入るであろう。



「…とりあえず出ようか。
自殺する前に凍死する」



水に浸かった彼女の腕を引き上げて、濡れるのも特に厭わずに男はセラを抱きかかえた。


「……っ、濡れ」


「構わないよ。
抱えなきゃもう歩けないだろう」



その言葉に気遣いはない。

邪魔だからどかす、ただそれだけであり。



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