古城のカラス


魔術師という存在を、セラは知っていた。


同時に『因子』が無ければ人間である魔術師は何もできないことも。


今でいえば、酸素と何かしらの発火装置が無い限りは術師といえど薪に火をつけ、傷も残さず自らの腕を燃やすなどできない。


『人ではない』ことをやっと実感して、セラは目の前の少年が怖くなった。




「僕は人形と大差無いんです、ほら、人形は布の中に綿を詰めて糸で紡いだ塊でしょう。

僕も同じ、皮の中に沢山の火を詰め込まれて魔術で紡がれたただの人形で、違うと言えば、言葉が話せて意思があることくらい」



えへへ、と照れくさそうにホムラは笑った。


台詞の後では自嘲にしか見えない。


無意味な質問をして少年に傷を付けたという自覚が起きて、セラは泣きたくなるほどに胸を締め付けられる。



「あ、でも父さんは違いますよ」



こんな人形とは違いますから、と、慌てた様子でホムラは言った。




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