古城のカラス
「人間たる資格が奴には無いのさ」
言葉をさらに継いだ第三者に驚いて、ホムラは背にした扉の方を振り返る。
ルーク、と、見間違うほどよく似た容姿の男がそこに、壁に背を預けてたっていた。
白い肌に黒い髪、紅い瞳、別人と判断したのはルークよりも身体つきが小柄で、長髪ではなく短髪であるから。
よくよく見れば、ルークよりも若い、あどけなさが残る青年である。
黒いスーツに身を包み、胸になにかしらの紋がある。
その青年を憎たらしげにホムラは睨み付けた。
「無礼ではありませんか、人の家を勝手に歩き回るなど」
「無礼ね、奴に礼節なんて必要と思うのか」
「父さんは結社の一員ですよ!
爵位だって」
「ああ、あれは陛下の気紛れに過ぎないことだろうが、そう、爵位ね、ルークは確か伯爵だっか」
ホムラは唇を噛んで拳に力を込めた。
伯爵の地位を笑うのだ、この青年は。
「そうですよ、サー」
震える声でホムラは言った。