古城のカラス


サー、即ち、武将に送られる族にこそ送られる呼び方である。


セラの知っている限りでは『サー』は騎士団上位の者を呼び、また青年の腰にもきちんと剣が宿っている。


黒い鞘に収められた細身のものだ。



青年は眺めるように視線を送って来る彼女に興味があるらしい、意地の悪い笑みを浮かべて室内に足を踏み入れた。



ホムラが隠すようにセラの前に立ちはだかる。




「ずいぶん美人を拾ったな」


紅の両眼が三日月に歪む。



「あげませんよ、父さんが連れて来たんですから」


「いらないよ。
人のを取るほど美人に飢えて無い」


「じゃあ近づかないでください」


「…は、なんだ、しっかり使い魔として機能しているようじゃないか」


「からかうな!」



ホムラは声を荒げ、カッとなって青年に拳を振るった。




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