古城のカラス


やがて用事が済んだアイヴァンス侯爵は早々に帰った。


その後ホムラが来たので、セラはどうしている、と尋ねると。



「お部屋で泣いています」


「泣く?なんで」


「アイヴァンス侯爵が…」


「ああ」



そういう人の感情に極端に疎いルークも、付き合いの長いあの青年が一体彼女に何を話して聞かせたかの想像は簡単だった。


ルークが『瑠璃』の後継者だと知れば、セラはきっと短剣を振るうだろう。


そして彼女に枷を断ち切ってもらえばいいのだ。



どこまでも勝手で気紛れ。


ルークは、その酔狂に付き合うつもりなど微塵もないというのに。



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