古城のカラス


帰る場所など無い。


帰る理由も無い。



だってあそこにはもう、何も残ってはいないのだから。



祈る必要もありはしない。


思考することも必要無い。



すべて暗い海の底に。



苦しくても悲しくても仕方が無いこと。




ただひたすらに残る喉の痛みを、「寂しさ」と名付けて哀れんでいる。




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