古城のカラス



セラは養女であった。


といっても、上の兄二人と姉一人とは腹違いの兄妹で、血が繋がっているといえばそうだった。


母は若い頃からの娼婦の身分で、父親が身勝手に身籠らせた子がセラである。


生活の苦しい彼女の母は、どうにか娘だけでもとレナード伯に養女の申し出をし、美しく育ったセラに気をよくして伯爵は快く申し出を受け入れた。


ところが彼女の扱いは酷いもので。


その容貌に妬んだ継母と姉は酷くセラを苛め尽くした。


リアリティなシンデレラを求めれば、ああなっただろう。



しかし彼女に訪れたのは、魔法使いではなく、ある晩突然の火事であった。




けたたましい夫人の悲鳴で目を覚ましたセラは、何事かと夫婦の寝室に奔った。


寝室の扉は半開きになっており、ノックをしても返事が無いので、入ってみればベッドの上で横たわる二つの死体があった。



胸を切り開かれ、あるいは喉を突かれ、血塗れになった二人はピクリともしなかった。



すぐに警察を呼ぼうと部屋を出た瞬間、今度は姉の悲鳴がした。


続いて帰省していた兄たちの声が立て続けに。



その恐ろしい鴉のような断末魔の叫びを思いだすと身体が震える。



屋敷内を走り回っている最中に、回廊が炎に包まれていることに気がついた。




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