古城のカラス
その後気を失った彼女が、次に目を醒ましたのは病院の白いベッドの上だった。
薬の独特な匂いが鼻を突き、全身に包帯を巻かれて身動きが儘ならない状態で、首だけで看護師の顔を映した。
死に損なった――…、最初にそう思った。
火に焙られる苦しみを知って、もう死ぬんだと覚悟していたからだ。
その覚悟の裏に僅かな喜びを覚えたから、この世にまだ健在していると知ると落胆が大きく。
そう、まさに今日この日のように。
また死に損なったと思ってしまった。
彼女が暗殺者の名前を知ったのは、身体が回復し結社に籍を置く貴族の元に奉公に行った頃のこと。
絢爛な主人たちの給仕をしていた時に噂話を聞き付けたのだ。
レナード伯の死は処刑であったらしい、誰にって、アイヴァンス卿さ、レナードは愚かしくも魔術を手に掛けたらしい、ああそれで、つまりは国に殺されたのだ。