古城のカラス
大旦那様の名前は、ジェファースン・フェリアというらしい。
名前を聞いたことがあるか、と尋ねられるが、答えは全面的にノーと応える。
「厳しい方なんですか」
「…いいえ、とても富に貪欲なお方です」
ホムラは眉間に皺を寄せ、唇を噛み締めていた。
「アイヴァンス卿は父さんを幽閉しているのは神だと言いましたが、正確には幽閉しているのは大旦那様です」
「ルーク様を、でも、どうして」
「お金のためですよ。
父さんは人である権利を剥奪された代わりに『ある権利』を与えられました」
「…なんですか、それは」
「『生きる』権利です」
それを聞きだして、または教えてどうしようということは無かった。
ただその応えを共有したがるのが心ある人というもので、ホムラは喋りすぎたことに気付いて慌てて口を塞いだ。
ところが地獄耳というものは自然と現れるもので。