古城のカラス



吐き出す吐息は白く。

水に濡れた手を月に透かした。


透けはしない、生きているし、確かにセラは存在しているから。

このまま水になれたらどれだけ幸せだろう。



悲しみに酔う悲劇のヒロインに、なれるものならなりたかった。


同情でもなんでもいいから、誰か此処で泣いている女に気付いてくれはしまいか――…。



そんな無意味で無価値な足掻き。



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