古城のカラス
「ちょっと!」
耳を裂くような声が急に近くでしたので、驚いて振り返れば義姉がキッと睨んでいた。
「どうかしましたか」
「どうかじゃないわ、これ!」
差し出されたのは銀の食器。
「曇ってるじゃない!
きちんと磨かれていない食器で、義姉に食事させる気なの、あんた!」
「も、もうしわけございません!」
「いつまでたっても使えないんだから!!」
そう喚いて投げつけられたシルバーは彼女の頬に当たり、床に落ちると割れてしまった。
血が流れた。
「汚いわね、さっさと片付けなさいよ!」
人の血を『片付けなさい』か。
「なによその目は!
養子なら養子らしく、有り難く使われてなさい!」
「申し訳ありません」
大丈夫、殺されることはない。
大丈夫、頑張れば今日も夜が来る。
大丈夫、忙しくしてれば、すぐに時間は過ぎるから。