古城のカラス
「セラ、どうしたんだいその傷は!」
傷を塞ぐ物なんて貰えないので、血が止まるまで頭に布を巻いた。
仕事がまだあったので、その顔のまま働いた。
「……庭で、薔薇に引っ掛かりまして」
偽ることを覚えていた。
事実を伝えてはならないこと、取り繕うことの正義を覚えていた。
そんな風に哀れまないで欲しい。
あなたが強いた私の存在なのだから、蔑んで嘲笑ってくれればいい。
そうすれば私も思い切り憎めるというのに。
「おいで、手当をしてあげよう」
そう言って手を引く。
嫌味や皮肉と思いたい。
「いえ、結構です」
「それでは傷が化膿してしまうよ」
父上はひどく曖昧な愛情をくれました。