古城のカラス
「なんだ、やっぱりダメか」
「……ふえっ!?」
至近距離、と言ってもすぐ隣に現れただけだったのだが、突如近くに人がいたかと思うと心臓が口から出そうな勢いでセラは飛びのいた。
屋敷内にはホムラとルークしかいないと思っていたものだから。
「あ、ええと…サー・アイヴァンス」
「ジンでいい。
友人の友人に堅苦しく呼ばれるのは、あまり好きじゃないんでね」
「友人ですか、私が」
気に食わなかったのか、表情を曇らせるセラを見てジンはふっと笑った。
「遺伝について聞かされたんだろう。
秘密を公開してくれるっていうのは友人と呼ぶに相応しい存在である証拠だ」
「そうなのでしょうか」
そのきっかけを思い出して、なおセラは頷けない。
この青年とは血縁なのかと尋ねただけだ。
そう思われることはルークにとって不愉快でありまた事実ではない。
どうして呪いについて明かしてくれたのか。
「それは、君がルークを『人と変わらない目で見た』からだ」
「はあ…って」
「読心術を体得している」
「…それって、ルーク様もできるんですか」
「冗談だ。
君の様子を見に馳せ参じて奴から聞いた。
それから君の表情を見てれば思考回路くらい読める」
真面目くさった口調でジンは言った。
「なにせ何百年変わらない人格と記憶だからね」
自嘲するように笑う。