古城のカラス
「野獣の本性は怖かったか。
やはり助けてやる気にはなれないか」
「え、あ…ええと」
「そういえばきちんとした返事も無しに、こんな質問はないか」
ジンは八角形の東屋に無造作に置き去られた長椅子に腰かけて、彼女と同じように雨を眺めた。
「…助けるって、誰を、何からですか」
ジンは目を丸くして彼女を見た。
しかし直ぐに目線は庭に投げ出される。
「ルークを、彼の父親からだ」
「何故彼はここに閉じ込められているんです、あの本のどこに守る意味があるのでしょう」
「…解らないか。
俺やルークは千年単位でずっと身体だけの生死を繰り返している、ということは、何百年前に葬られた歴史の事実を知っているということだ。
過去の汚点をネタに国や貴族に付けこめば、一体どれだけの地位が築かれると思う」
「それだけですか」
「だから伯爵はルークを手放したくない。
外界と接してなにかに心を奪われでもしたら、いついなくなられるのか怖くて仕方が無いからな」
「……どうして私に助けさせたいんです」
それは君が人だからだ。
人でなければ鎖は切れない。
最初にそう言われたのに、別の応えを期待している自分はどういうことだろう。
だけど侯爵は期待を裏切らなかった。
「君はよくルークに似ている」