古城のカラス
朝日を見ては溜息を吐く者がいる。
夜の孤独が愛しいからだ。
手放したくない、侵されたくない、見られたくない、聞きたくない…わが身を晒す全てのことが、彼の者には怖いからだ。
『忙しく廻る水車を俯瞰する鴉とように、孤独とは良い物だ』
「…まだ、夜まで時間はある」
ジンは胸元からアルバート時計を取り出して見た。
「昔話を聞かされるのは好きか」
「…よく母に、覚えている限りの物語を聞かせて頂きました」
「そうか、なら、そんな感じで聞いていて欲しい。
残念ながら俺は独りきりが楽しいなどとは思えない質らしくてね、フリだけでも耳を傾けてくれると嬉しい。
…ああ、歳を重ねると懐古が癖になっていけないな」
「………」
セラは心中不思議でたまらなかった。
霧のようにぼんやりとしたその疑問が、いまやっと晴れて、頸を傾げられる。
どうして私は、この男に殺意を持たぬ。