古城のカラス
深い木々に覆われた森の底、木漏れ日をさらに遮って翼を広げる鳥は、やがて少年の肩えと舞い降りた。
少年の狭い肩では居心地がとても悪そうだ。
文句を言わんばかりに鳥は二、三度足を組み直して、ようやく落ち着いたようだ。
お前馬鹿だな。
鳥はその黒い嘴で少年の頭に乗った葉を落した。
「お前良い奴だな…」
少年は鳥の親切に感激して、その艶々とした羽毛を撫でた。
馬鹿にされていることに気付いていない。
鳥は呆れて鎌首をもたげた。
すっかり鳥が懐いたものと勘違いして、「よし行くぞ」と意気込んだ少年は突如立ち上がった。
びっくりして鳥は翼を広げる。
狭い肩でいきなり動かれると、バランスが取りにくいというものだ。
「ぼくの新しい友達だぞ!
一緒に父上に挨拶しに行くんだ!」
「ガア、ガア!」
勘弁してくれ。
鳥は少年の肩から離れると、元の通り木の高い枝にとまった。
「あ…」
少年は悲しそうに鳥を見詰める。
涙が溢れそうな顔をして、鳥はばつが悪くなってとりあえず鳴いた。
「嫌か…そうか、嫌なのか…」
少年は俯いた。
折角綺麗な金髪を、またクロークの下に隠して、逃げるように走り出した。