古城のカラス
ところが。
それはそれは唐突に、セラの望みは絶たれてしまった。
「…あのさあ、死ぬのは結構だけど他でやってくんない?」
「……えっ」
引きつった声とともに振り返ってみれば、背後には真っ黒なマントを羽織った男がいた。
病的に肌は白く、目は充血とは違う意味で紅かった。
その異常な容姿よりも他に、セラは彼の足元に目がいった。
立っている。
浮いているのではない、波に乗って揺れている。
誰、と問う声は出なかった。