古城のカラス
どこに居たって、少年は一人だ。
果てない孤独は夜と雨に満たされて、いつか明けるんじゃないかだなんて希望も薄れていく。
寒いより、怖いより、今の少年はなんだか寂しくてたまらなかった。
家来たちの、嘘でも優しい言葉と手の温もりが恋しくなった。
「う…ああ、うあっ、ああああ」
終に少年は声を上げて大きく泣く。
誰でもいいから迎えに来てくれ…そう誰とも知らない救世主に必死で請う。
それは時に父であり、その次は死んだ母であり、かと思えば養育係のナニーだったり、護衛のお兄さんだったりと、とにかく思いつくだけの名前を上げて。
そうやって、声が枯れるほどに声を上げて漸く疲れてきた頃、不意に頬に風が当たった。
吹き込む風とは別の、獣くさい風だった。
「あ、あ…」
枯れた声を漏らしながら、少年は幅の狭い右肩を見た。
昼間の黒い鳥が、夜色の目をくりくり動かして少年をじっと見つめていた。
少年と眼が合って数秒すると、今度は鳥は蹲る少年の目の前に移動し、頸を傾げながらからかうように少年の顔を覗き込んだ。
なに泣いてんだ、人間のくせに。
少年がしゃくり上げながら鳥にむかって手を伸ばすと、鳥は自ら頭を掌に滑り込ませた。
慰められているという確信を持って、少年はまた泣いた。
鳥は呆れ顔でその膝に乗っかる。
「ふっ、うっ、う…」
ぼさぼさになった少年の金髪を、鳥は嘴でかきわけた。