社長の旦那と恋知らずの妻(わたし)
「あの拓斗さんは?」
『大変申し上げにくいのですが先程社長室で社長が倒れましてそのご連絡を』
拓斗さんが倒れたって…
耳に当ててた携帯がスルリと手から滑り落ち、床に落ちてしまった。
「三浦!?」
いつの間にか隣にいた鈴木君が心配そうに私の顔を覗き込む。
「ほら、通話中じゃん」
と、私が落としてしまった携帯を青葉が拾ってくれて渡してくれた。
『…くさ…、奥様』
携帯からそんな串田さんの焦ったような声が聞こえるのに、なかなか受け取れない。
そんな私を見兼ねた青葉が。
「じゃ、優子の変わりに聞くからね」
と、言って私の携帯を耳に当てていた。